先日の氷山モデルに引き続き適用課題に関連する内容として、今回は、適応課題を解決するために欠かせない「対話」について取り上げたいと思います。

対話とは何か

適応課題を解決するためには対話が欠かせないのですが、そもそも対話とは何でしょうか。

対話とは、伝達や報告などの一方向のコミュニケーションとは違い、双方向のコミュニケーションを言います。さらに、そこでやりとりされる言葉の意味が互いに共有できていること、加えて当事者の認識や捉え方が対話前と対話後で変化するということが重要です。

まず、言葉の意味が互いに共有できているというのは、一方が発した言葉や話している内容において、双方がその意味や背景など、言葉の奥にあるものを共有できているという状態です。「コップ」という言葉を聞いて、透明なグラスをイメージする人もいれば、持ち手つきのマグカップをイメージする人がいるように、言葉の捉え方は人それぞれです。それをコミュニケーションの当事者同士で揃える必要があります。その上で、その言葉の背景など、奥にあるものを共有します。

次に、対話後の変化ですが、コミュニケーションをとった後、当事者の認識や捉え方に何らかの変化があって初めて対話が成立したと言っても過言ではありません。対話前はこう思っていたけど、対話したら違う捉え方ができたなど、その人の心の中や行動に何かしらの変化をもたらすのが対話です。

対話を成立させるための5つのポイント

次に対話を成立させるためのポイントとは何でしょうか。それは主に次の5つです。

  1. 互いに敬意を持つ
  2. 自分の常識を前提としない
  3. 必ず共感できるとは限らないが必ず伝わるという前提に立つ
  4. 相手が正しいかもしれないという前提で考えてみる
  5. 共通の認識や捉え方をつくり出す

互いに敬意を持つ

まず大前提として、互いに敬意をもつということです。職場内において対話する相手は敵ではありません。しかし現実には、職場の同僚や上司、または組織そのものを無意識に敵と見なしている人がいます。職場にいる自分以外の人は、確かに自分とは違います。自分とは違う強みやワークスタイル、価値観をもち、自分とは違う考えがあり違う行動をします。しかしそれは違うだけであって、決して敵ではありません。共に組織のミッションを遂行する仲間という認識を持ちましょう。

また、敵とまでは見ていないまでも、相手を軽く見たりしていないでしょうか。上司から見た部下、先輩から見た新人、成績の良い営業マンから見たその他の人、花形部署の人から見た間接部門の人など、自然と上下関係のようなものを前提にしてしまっていることは多いかと思います。

そういったことはいったん忘れて、自分と同じひとりの人として敬意を持つことが重要です。

自分の常識を前提としない

人はかなり意識しないと、目の前にいる相手も自分と同じ様に感じ、同じ様に考えると思い込んでしまいますが、これは違います。自分と相手は全く違う人格です。極端な表現をすると、宇宙人とのファーストコンタクトかのように、相手は自分と違うという前提でコミュニケーションをとりましょう。

自分はこう考えるけど相手はどうだろうか、自分はこのやり方がやりやすいけど相手はどうだろうかなど、かならず相手はどうだろうかという問いをもつようにしましょう。

必ず共感できるとは限らないが必ず伝わるという前提に立つ

前述の通り、自分と相手は違います。そのため、対話を尽くせば必ず共感できるとは限りません。しかし、お互い理解することは可能です。表面的な意見が違う場合、なぜ相手は自分と違う意見を持っているのかを明らかにすることで、自分の意見が相手の意見と同じに変わることはないけど、相手がなぜそう思うのかは納得できたという状態には持っていく努力をしましょう。

安易に決めつけることをせず、意見は違って当たり前、しかしなぜ違うのかをはっきりさせるということが重要です。

相手が正しいかもしれないという前提で考えてみる

次に、自分の意見と相手の意見が違う場合、もしかしたら相手の意見の方が正しい、もしくはこの場合は相手の意見の方がいいかもしれないという前提で内省してみましょう。そうすることで新たな気づきがあり、より相手のことが理解できることがあります。その過程で出てきた疑問などを相手に問いかけることで、さらに深いレベルでの対話が進みます。

このとき自分への問いかけ方法がポイントとなります。通常の立ち位置や認識とはあえて違う方向から問いかけることで、新たな気づきが得やすいでしょう。見る方向を変えてみるのです。また、背景や感情に注目することも有効です。

共通の認識や捉え方をつくり出す

お互いが違うと言う認識で終わっても良いケースもありますが、やはり組織においてはそこからどうするのかが重要です。

認識した違いを元に、課題を再定義したり、共通点を探ったり、組織のミッションや成果を基準に考えるなどして、当事者間で共通認識を醸成しましょう。そうすることで具体的なアクションへとつながります。