このコラムは傍楽通信2014年11月号の記事をリライトしたものです
生きがいはありますか?
皆さんの「生きがい」は何ですか?
明確に私の生きがいはこれだと言える人、言えない人、また言える人もその対象は様々だと思います。そんな中、「仕事が生きがい」と言う人が世の中には少なからずいます。少なくとも遊びが生きがいいう言葉よりも多く耳にします。これはなぜでしょうか。ひとつには、仕事は誰かの役に立ったり、何かを生み出したりするけど、遊びは自分のためだったり、何かを消費することだったりという側面があります。つまり社会的にポジティブなイメージをもつ仕事と、ネガティブなイメージをもつ遊びというステレオタイプな見方が背景にあります。しかしそれだけではありません。今回はこのことについてもう少し詳しく考えていきたいと思います。
仕事が生きがいとは?
「仕事が生きがい」という言葉を聞くと、「信じられない!」という感想を抱く人も多いのではないでしょうか。おそらくそう思う人は、仕事は嫌々させられるもの、生活のために仕方なくやっているもの、趣味や遊びのための資金を得るためにやっているもの、そんなふうに感じているかと思います。しかし、現実に仕事が生きがいという人がいる以上、仕事には生きがいになり得る何かがあるはずです。仕事と遊びの違いは一体どこにあるのでしょうか。両者には少なくとも二つの大きな違いがあります。
仕事と遊びの違い①
一つ目は困難や壁の存在です。仕事をしていると必ずぶつかる困難や大きな壁。皆さんも経験があるのではないでしょうか。人は困難にぶつかり、これを乗り越えたとき大きく成長します。その成長を実感したとき達成感ややりがいを感じます。もちろん遊びや趣味にも困難や壁は存在します。マラソンで自己ベストがなかなか更新できない、テレビゲームで最終ステージがなかなかクリアできない、ピアノで特定のフレーズがどうしても弾けないなど、困難がありこれを乗り越えたときには同様に達成感ややりがいを感じることもあるでしょう。しかし両者には決定的な違いがあります。それはこの困難の源が他者か自分かです。仕事の場合、困難はお客様だったり上司だったり、多くが他者からの要求に端を発します。それ故に逃げることが許されません。一方、遊びや趣味の困難はたいていの場合、自分で設定したものです。やるもやらないも自分で決められます。この差は歴然です。他者から発せられた困難は人を大きく成長させるのです。
仕事と遊びの違い②
二つ目は行為の対象が他者か自己かと言うことです。これは先ほどの困難の源にもつながりますが、行為そのものも仕事は他者のため、遊びや趣味は自己のためという側面があります。人は自己の存在を、誰かに感謝された、尊敬された、あるいは逆に恨まれた、など他者との関係に求めます。仕事を通して他者とかかわることによって、もっと言うと他者から感謝されることによって自己の存在を実感、言い方を変えると自己重要感を満たします。一方、遊びや趣味はあくまで自己満足の世界でしかありません。阪神淡路大震災以降、災害時のボランティア活動がとても活発になったといわれます。無報酬であり、肉体労働である災害ボランティアにどうしてこうも人が殺到するのでしょうか。これはひとえに多くの人が自己の存在を実感したいからです。誰かのために何かをして役に立つという仕事の原則が現代の多くの職場で実感しづらいという現実の表れなのです。
まとめ
仕事と遊びの違いについて二つの観点から見てきました。誤解してほしくないのは決して仕事を生きがいにしてくださいと言っているわけではないと言うことです。仕事はつらいもの、できればやりたくないものではなく、生きがいになり得るものということに気づいていただければ幸いです。仕事で困難に遭遇したら乗り越えてみてください。また仕事をするときには目線を少しあげてその先にいる人のことを考えながらやってみてください。きっと新たなことに気づくはずです。