弊社のお客様であり、ドラッカーマネジメントの学びの先輩でもある、吉田麻子氏が5冊目の本を出版されました。
今回は吉田さんのご厚意で著者インタビューを掲載させていただきます。
書籍情報

かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら
- 出版社 : ダイヤモンド社
- 発売日 : 2025/9/10
- 単行本(ソフトカバー) : 354ページ
- ISBN-10 : 4478121966
- ISBN-13 : 978-4478121962
著者インタビュー
- Qなぜこの本を書いたのか、きっかけを教えてください。あわせて、本書のテーマに関心を持たれるようになったご自身の原体験があれば教えてください。
- A
私は25年ほど前からカラーの勉強を始めたのですが、学びを深めていくうちに西洋と日本の色彩に対する美意識の違いのようなものを感じるようになっていきました。
日本には植物染料による独特の中間色文化があり、四季折々の自然界の彩りを愛で、多くの色名があり、特に平安時代には十二単の襲(かさね)の色目などにみる色彩文化の隆盛があったことを知りました。
そこで「カラーリストと読む『源氏物語』」という読書会を仲間たちと函館で始め、平安時代の色彩について学びを深めていきました。
一方で、ドラッカーの本を読み進めていく中で、『すでに起こった未来』という論文集の中の『日本画にみる日本』において、「中世における西洋最大の偉業は、トマス・アクィナスの『神学大全』であり、これは人類の歴史の中でも最高の概念的・分析的な著作である。これに対して、日本の中世にあたる11世紀の最も誇るべき偉業は、宮中の男女、愛と病と死に関する婉曲な描写からなる世界最高の小説、紫式部の『源氏物語』である」という文章に出合いました。
ドラッカーは日本画のコレクターとしても有名で、ドラッカーコレクションは千葉や山口、長野の図書館で展示企画されたこともあります。私も観に行きましたが室町時代の山水画など、日本人の精神文化を感じる静けさと奥行きのあるコレクションでした。
ドラッカーは日本画を通じて日本の美学を見ていることを、この章で書き表しており、私はいち日本人として嬉しくなると同時に、ドラッカーのいう日本人の知覚能力を再認識する機会となりました。
「ドラッカーが『源氏物語』に言及している!」、感動の瞬間でした。
このようなことを通じて大好きな分野である色彩とドラッカーがいつしか混ざり合い、一つの作品となっていたような気がします。
- Qこの本の中で、特に読者に一番伝えたいメッセージは何でしょうか?
- A
私自身、『源氏物語』を読んでいて「今の時代と違うなあ」と感じることがいくつもありました。それは、たとえば一つのことを丁寧に愛でる文化というようなものです。
今の時代はメッセージアプリでハイスピードで会話が行き交ったり、SNSなどの膨大な情報量を浴びるようにして暮らしていますので、その情報処理のスピードや一つ一つへの興味関心の向け方もとてもスピーディで多種に対して瞬間的に行うことが多いのではないかと思うのです。
それに対して平安時代というのは、ゆったりとじっくりと、丁寧に深く、一つの事柄に対して感動し、愛でていたのではないかと感じます。
このような感じ方を通じて培われた日本人の知覚力や感性といったものがあるのではないかと思うんです。
ドラッカーもまたマネジメントにあたって、とくにイノベーションなどにおいては知覚することが重要であるといっています。
「知覚の重要性」といったことをお伝え出来たら嬉しいなと思います。
- Q執筆中に「ここは特に苦労した」と感じた部分はありますか?
- A
当たり前ですが平安時代にはまだマネジメントという概念がありませんので、『源氏物語』の中の彼らにどのようにドラッカーの言葉の本意を伝えていくことができるだろうか、どんな言葉を用いたらいいだろうかということについては特に苦労しました。
また、執筆に足掛け9年ほどの時間がかかっており、物語を創り上げていくのはなかなか難産でした。彫刻刀一本で毎日彫り物をしているような感覚でした。
- Qどのような方に特に読んでいただきたいと考えていますか?
- A
前作『人生を変えるドラッカー』は、ドラッカーのマネジメント体系のうち「セルフマネジメント」を中心に書きました。
それに対して本作のテーマは「人と仕事のマネジメント」、つまり組織の中でのマネジメントです。小説の中で実施される読書会のテーマも「よい仲間とよい仕事編」です。
ですから、このようなお悩みを抱える方に特におすすめです。
- 今の会社の人間関係で悩んでいる
- 部下の育成で悩んでいる
- 上司とうまく合わなくて悩んでいる
- 仕事が忙しすぎてどうしたらいいかわからない
- 自分らしさを生かす方法がわからない
本書は「源氏物語の世界にワープして、光源氏たちとドラッカーを学ぶ」という設定で書かれています。現代とは違う舞台設定だからこそ、ドラッカーが説いた普遍的なマネジメントの原理を物語として立体的に味わうことができるはずです。
経営理論を学びたいけれど硬い本は苦手……という方にも、エンターテイメントとして楽しみながら読んでいただけます。
さらに読者層ごとにこんな楽しみ方があるでしょう。
- ドラッカーをまだ読んだことがない方へ:物語小説として自然に親しめる入口に。
- すでにドラッカーを学んでいる方へ:理論を新しい角度から照らし、発見を得られる読み方に。
- 自分らしい働き方や生き方を模索している方へ:普遍的な問いからヒントを受け取る機会に。
光源氏とドラッカーという、一見遠い二つの世界の交わりを、ぜひまずはお気軽に楽しんでいただけたらと思います。
- Q読者に「まずはこれから始めてみてほしい」という一歩があれば教えてください。
- A
本の中で出てくるキーワード、たとえば「強みを生かす」ということを具体的に普段の生活の中でやってみてはいかがでしょうか。
自分らしさについて考えてみるというのも良いですし、あるいは苦手な上司の短所をひっくり返したらどう長所として見ることができるだろう、というように「強みを生かす」をゲームのように取り組んでみるところから始めてみるのがいいかと思います。
まずは「気になった言葉をゲームのように実践してみる」ということをお勧めいたします。