今日も会議で一日が終わってしまった。そんな言葉をよく耳にします。経営者や管理職の方から相談を受ける際、会議の多さに悩んでいる声は少なくありません。朝から夕方まで会議が続き、本来やるべき仕事は結局残業でこなすことになる。それでいて会議の成果は曖昧で、結局何も決まらない。そんな状況に疲弊している方も多いのではないでしょうか。

P.F.ドラッカーは、会議について興味深い指摘をしています。

人は、仕事をするか、会議に出るかである。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

つまり、会議は仕事そのものではなく、仕事をするための手段に過ぎないということです。さらにドラッカー教授は、こうも述べています。

会議は原則でなく例外にしなければならない。みなが会議をしている組織は何ごともなしえない組織である。時間の四分の一以上が会議に費やされているならば、組織構造に欠陥があると見てよい。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

あなたの組織ではどうでしょうか。もし週の労働時間の4分の1、つまり週10時間以上を会議に使っているなら、それは会議が過剰になっている証拠かもしれません。しかし問題は、会議の数や時間だけではありません。たとえ会議の数が少なくても、その会議が成果を生まなければ意味がないのです。

多くの組織では、ファシリテーション研修を実施したり、会議のルールを定めたりと、会議のやり方を改善しようとします。しかし、いくらやり方を変えても、会議の本質的な問題は解決しません。では、何が問題なのでしょうか。

問題は「やり方」ではなく「目的の不在」である

会議が成果を生まない本当の理由は、進行の技術や時間管理の問題ではありません。最も根本的な問題は、何のための会議かその会議から何を得るべきかが明確になっていないことにあります。

多くの会議は、定例だから開催する、何となく集まって意見交換する、とりあえず報告し合う、といった具合に、集まること自体が目的化しています。会議の招集メールには日時と議題は書かれていても、その会議で達成すべき成果や、参加者に求められる貢献が明記されていることは稀です。

目的地が定まっていない船は、どれだけ立派な操船技術があっても、目的地にたどり着くことはできません。会議も同じです。会議の目的得るべき貢献が明確でなければ、どれだけファシリテーションの技術を磨いても、成果は得られないのです。

ドラッカー教授に学ぶ「貢献に焦点を合わせた会議」

ドラッカー教授は『経営者の条件』の中で、会議についてこう述べています。

会議、報告書、プレゼンテーションは、エグゼクティブの仕事の典型的な光景である。それらは、彼らに特有の日常の道具である。しかもそれらは膨大な時間を要求する。したがって成果をあげるには、会議や報告書やプレゼンテーションから何を得るべきかを知り、何を目的とすべきかを知らなければならない。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

会議は膨大な時間を要求する道具だからこそ、そこから何を得るべきか、何を目的とすべきかを知ることが重要だということです。

そしてドラッカー教授が最も重要な原則として挙げているのが、次の点です。

そして最も重要な原則は、会議の冒頭から貢献に合わせることである。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

会議を始める際に、この会議は何のために開催され、どのような貢献を得ることを目指すのかを明確にする。この一点が、会議の成否を分けるのです。

では、具体的にどうすれば会議を成果あるものにできるのでしょうか。ドラッカー教授の考えに基づけば、次のような原則が導き出されます。

会議の冒頭で目的と貢献を明らかにする

会議を始める際、まず司会者は会議の目的と参加者に求められる貢献を明確に述べる必要があります。たとえば、この会議は新商品の販売戦略について意思決定する場なのか、それとも現場の課題を共有して解決策を検討する場なのか。参加者は意思決定者として判断を下すことを求められているのか、それともアイデアを出すことを求められているのか。こうした前提を共有することで、参加者は何に貢献すべきかが明確になります。

会議を目的に沿って進める

会議の途中で議論が脱線することは珍しくありません。しかし、目的が明確であれば、司会者はいつでも議論を本筋に戻すことができます。また、会議の種類によって進め方も変わります。意思決定のための会議であれば、論点を整理し結論を導くことに集中すべきです。一方、勝手にアイデアを言い合うだけの懇談の場にしてはなりません。同様に、思考と検討のための会議を、誰かのプレゼンテーションの場にしてもいけません。目的に応じた会議の進め方が求められます。

全員を刺激し、挑戦させる

会議は一部の声の大きい人が発言するだけの場であってはなりません。参加者全員が何らかの貢献をすることを期待され、そのために発言を促される場でなければなりません。司会者の役割は、全員を会議に巻き込み、それぞれの強みを引き出すことです。

司会者と発言者の役割を分ける

ここで重要な原則があります。ドラッカー教授は次のように述べています。

会議を生産的にするための原則は他にもある。例えば、会議を司会しつつ重要な発言に耳を傾けることはできる。あるいは討議に参加して発言することもできる。しかしこの両方を同時に行なうことはできない。だがこの原則は、明白でありながら大体において無視されている。

P.F.ドラッカー『経営者の条件』

会議を司会することと、討議に参加して発言することの両方を同時に行うことはできない。これは明白でありながら、多くの会議で無視されている原則です。

司会者が自分の意見を強く主張し始めると、会議は司会者の意見に引きずられます。参加者は司会者の顔色をうかがい、自由な発言ができなくなります。司会者は進行に徹し、参加者の発言を引き出すことに集中すべきです。もし自分が発言したいのであれば、司会を他の人に任せるべきなのです。

会議の終わりに冒頭の目的に立ち返る

会議の最後には、必ず冒頭で述べた目的に立ち返り、結論を確認します。この会議で得ようとした貢献は得られたのか、意思決定すべき事項は決まったのか、次のアクションは明確になったのか。こうした確認がなければ、会議は単なる話し合いで終わってしまいます。

明日からの会議を変える3つのアクション

では、明日からの会議をどう変えればよいのでしょうか。次の3つのアクションから始めてみてください。

まず、次に会議を招集する際、会議の目的と得るべき貢献を明記することです。会議の招集メールや案内に、日時と議題だけでなく、この会議は何のために開催され、どのような成果を得ることを目指すのか、参加者にはどのような貢献が期待されているのかを書き加えてください。これだけで、会議の質は大きく変わります。

次に、自分が司会をする会議では、進行に徹して自分の発言を控えることです。特に経営者や上司が司会を務める場合、自分の意見を言いたくなる誘惑に駆られるかもしれません。しかし、司会者の役割は自分の意見を通すことではなく、参加者から最良の貢献を引き出すことです。参加者に問いかけ、発言を促し、議論を深めることに集中してください。

そして、会議終了時に必ず「当初の目的は達成できたか」を確認する習慣をつけることです。5分でも構いません。会議の冒頭で述べた目的に立ち返り、得られた結論や次のアクションを確認してください。この習慣が定着すれば、会議の参加者全員が常に目的を意識するようになります。

会議は組織にとって不可欠な道具です。しかし道具は、使い方次第で役に立つものにも無駄なものにもなります。会議を貢献に焦点を合わせた成果の場に変えることで、組織の意思決定の質は高まり、メンバーの当事者意識も育まれます。あなたの次の会議から、ぜひ実践してみてください。