中小企業の経営者・人事担当者の方から、こうした声をよく聞きます。多くの企業で評価面談は実施されていますが、実際には次のような状態に陥りがちです。

  • 評価結果を読み上げるだけの通達面談
  • 上司のアドバイスだけで終わる一方向の面談
  • 本人の弁解や言い訳で流れてしまう面談
  • 形式的に質問をするだけで、会話が深まらない面談

いずれにも共通しているのは、「面談が成長につながっていない」ということです。

制度としては機能していても、運用の要である“対話”の質が上がらなければ、評価制度は組織を良くする力を持ちません。

しかし、評価面談は本来、評価を伝える場ではなく、成長を引き出す場であるべきです。

では、なぜ評価面談は形骸化してしまうのか。そして、どうすれば評価面談を「人を育てる場」に変えられるのか。そのヒントを、実務で使える具体策とともに整理していきます。

成長しない評価面談の特徴

多くの企業で評価面談は実施されているものの、実態としては「面談はしているが、成長につながらない」という状態が珍しくありません。そこにはいくつか共通する特徴があります。

評価結果を伝えるだけで終わる

評価面談が評価結果の通知だけになってしまうと、本人の学びや気づきは生まれません。

通知中心の面談では、評価者からの一方通行となり、部下自身が成長のために何を見直すべきかを考える機会がなくなってしまいます。

本人の振り返りが浅い

面談で「どうでしたか」と聞いても、業務の事実や出来事だけを並べるだけで、強みや課題の言語化に至らないケースがよくあります。

自己分析が深まらなければ、次の行動改善につながらず、評価面談の意味が薄れてしまいます。

アドバイスを伝えるだけで終わる

上司が丁寧にアドバイスをしているつもりでも、部下が主体的に考えていなければ行動は変わりません。

アドバイス中心の面談は、部下の理解度や納得感を確かめないまま終わってしまい、行動に落とし込めないという問題があります。

日常業務と評価がつながっていない

日常の業務の進め方や成果と、評価シートの内容が紐づいていないケースもあります。そのため、面談で話す内容が本人の実感や課題と合わず、ただ項目に沿って説明されるだけの形式的な時間になってしまうのです。

このように、表面的には面談を実施しているように見えても、本人の理解や内省につながらなければ、対話は成長へと結びつきません。

では、評価面談を成長につなげるためには、まず何を見直すべきなのでしょうか。

評価面談の目的を再定義する

評価面談が形骸化してしまう最大の理由は、面談の目的が曖昧になっていることにあります。

多くの企業では、評価結果を伝えること自体が目的になってしまい、面談が「評価の通達」の場になっています。

本来、評価面談の目的は次の3つに整理できます。

本人の気づきを引き出す

評価面談は、上司が評価結果を伝える時間ではなく、本人が自分の強みや課題を自分の言葉で整理する場です。自分で気づいたことほど定着しやすく、行動改善につながりやすくなります。

次の行動につながる材料をつくる

評価面談では、過去を振り返るだけでは不十分です。

振り返りを踏まえて、次にどのような行動を取るべきかどの力を伸ばすべきかを本人と一緒に整理することが重要です。行動が明確になることで、翌日からの仕事の取り組み方が変わっていきます。

上司と本人の認識をそろえる

面談は、一方向の伝達ではなく、相互の認識を一致させる時間です。

本人が「こう考えている」、上司は「こう見えている」というギャップを埋めることで、目指す方向が明確になり、迷いなく行動できるようになります。

このように評価面談を捉え直すことで、面談は単なる評価の説明ではなく、次の行動を生み出す場へと変わります。

では、成長につながる評価面談を実現するために、どのような工夫が必要なのでしょうか。

成長を引き出す面談のための3つのポイント

評価面談を「評価を伝える場」から「成長を引き出す場」へと変えるためには、面談の構造を少し工夫するだけで大きな効果が生まれます。ここでは、どの企業でもすぐに取り入れやすい3つのポイントを紹介します。

本人に振り返ってもらう仕組みをつくる

面談の最初に、本人自身の振り返りから始めることが重要です。

上司が説明するよりも、本人が自分の言葉で強みや課題を語るほうが、納得感が高まり、行動への意識が高まります。

そのための工夫として、面談前に簡単な振り返りシートを提出してもらう方法があります。振り返りシートは評価シートをそのまま使ってもいいですし、評価シートを簡略化したものを別途作っても良いです。

「できたこと」「できなかったこと」「その理由」など、本人が整理するだけで、面談の質が大きく変わります。

行動に落とし込める問いかけをする

評価面談で最も重要なのは、上司側の問いかけの質です。問いかけ次第で、面談が上司の講義になるか、本人の成長を引き出す時間になるかが決まります。

例えば、次のような問いかけが効果的です。

  • 今回の評価の中で、自分が最も成長したと感じる点はどこですか
  • 課題に気づいたきっかけは何でしたか
  • 次の期間で優先したい行動は何ですか
  • そのために周囲に協力してほしいことはありますか

こうした問いに答えることで、本人は自然と未来に向けた行動を考え始めます。

面談の最後に「約束」をつくる

評価面談は、話した内容をその場だけで終わらせるのではなく、次の行動につながる具体的な約束づくりを行うことで効果が高まります。

例えば、

  • 次の1カ月で取り組む行動目標を1つ決める
  • 週1回、上司と進捗共有の場をつくる
  • 困ったときに相談するタイミングを明確にする

といった行動の約束を決めることで、評価面談が「話して終わり」の時間ではなく、「行動を生み出す時間」へと変わります。

評価面談が変わると組織はどう変わるか

評価面談は、単なる儀式でも、評価結果を伝えるための作業でもありません。面談の質が変わると、組織そのものの動き方に大きな変化が生まれます。ここでは、その代表的な3つの変化を紹介します。

成長する人が増え、組織全体のレベルが上がる

評価面談が成長につながり始めると、一人ひとりが自分の強み改善すべき行動チームへどう貢献するか
といった視点を持つようになります。

これは個人の変化が生まれる段階 で、最も手前のレイヤーです。日常の仕事の質が上がり、結果として組織全体のパフォーマンスが底上げされていきます。

上司と部下の関係性が良くなる

面談を通じて、上司と部下がお互いの考えを言語化し、認識を合わせる機会が増えます。認識のズレが減り、信頼関係が生まれ、日常のコミュニケーションがスムーズになります。

特に、部下側にとって自分のことをちゃんと見てもらえているという感覚は大きく、職場の安心感が高まります。

組織の推進力が高まる

個人が成長し、関係性の土台が強くなると、次に変わるのは組織の動きそのものです。

例えば、主な変化は次の通りです。

  • 自ら動く人が増え、指示待ちが減る
  • 改善提案や問題提起が増える
  • チームとしてのスピードが上がる
  • 部署を越えた連携が進みやすくなる

これは、個人の成長 × 関係性の改善 が積み上がった先に生まれる変化であり、組織の推進力を大きく左右します。

まとめ

評価面談は、制度の中の一つのプロセスに見えますが、実は組織の成長を左右する最も重要な機会の一つです。面談が評価結果の説明だけで終わってしまえば、制度は形だけになり、成長の循環は生まれません。

一方で、面談を本人の気づきを引き出す場行動を生み出す場認識をそろえる場として再設計すれば、それだけで評価制度は機能し始めます。

そして、面談が変わると、人が変わり、チームが変わり、組織の成果が変わります。

評価制度は「難しい仕組みをつくること」が目的ではありません。大切なのは、仕組みが現場で使われ、現場の成長につながっていることです。

もし、「評価面談が形骸化している」「部下が成長しない」「面談が負担でしかない」といった課題がある場合は、一度立ち止まって面談のあり方から見直してみませんか。

私たち傍楽(はたらく)合同会社では、

  • 評価シートの設計
  • 評価項目の見直し
  • 管理職向けの面談トレーニング
  • 制度運用の伴走支援

などを通じて、中小企業の評価制度の立て直しをサポートしています。

「うちの評価制度はこのままでいいのだろうか」そんな小さな疑問からで構いません。

あなたの組織に合った、成長につながる評価制度づくりを一緒に進めていきます。