このコラムは傍楽通信2015年10月号の記事をリライトしたものです

こんなことを思ったことはありませんか。

「○○先輩は□□が出来てすごいな。自分にはとても真似できない。」
「○○社長はすごい。同じように□□する事なんてうちでは無理だ。」
「もっと□□が出来たら良いのに。自分は全然だめだ。」

誰でも他者と比べて、その人にはあって自分にはないものに意識を向け、落ち込んでしまった経験があるのではないでしょうか。自分のなりたい姿を具体的な人物に設定し、その人が持っていて自分が持っていないもの、つまりギャップを確認しそのギャップを埋めていくことは決して悪いことではありません。そうすることによって成長していくのも事実です。しかし、そのあるものとないものの性質によっては、このギャップを埋めていくというやり方があまり成果をあげないことがあります。例えば冒頭の言葉をもう少し具体的にしてみましょう。

「○○先輩は英語を話すことが出来てすごいな。自分にはとても真似できない。」
「○○先輩はあっという間に人と仲良くなることが出来てすごいな。自分にはとても真似できない。」

スキルと資質、何が違うのか

この2つの例にはとても重要な違いがあります。それはあるものとないものがスキルなのか資質なのかということです。「英語を話す」ということは訓練すれば身につけることが出来るスキルです。そのため、「先輩は英語が話せる」けど「自分は英語が話せない」というギャップを認識し、そのギャップを埋めるために例えば英会話スクールに通うことで英語を話すことが出来るようになります。一方、「あっという間に人と仲良くなる」ということは生まれ持った才能のようなものです。もちろん、会話術などの訓練である程度は磨くことが出来ますが、もともと苦手だった人が他者からうらやましがられるほどの状態になることはごく稀です。

スキルとは、学習や訓練によって後天的に身につけられる能力のことです。語学力、プレゼンテーション技術、会計の知識、PCスキルなど、正しい方法で時間と努力を投資すれば、誰でも一定の水準まで到達できます。一方、資質とはその人が生まれながらに持っている特性や傾向のことです。初対面の人とすぐに打ち解ける社交性、物事の細部に気づく観察力、困難な状況でも動じない精神的な安定感、アイデアを次々と生み出す創造性などがこれにあたります。これらは経験を通じて多少磨かれることはあっても、本質的な部分は生まれ持った特性です。

欠けているものがスキルか資質かで対応は変わる

このように、あるものとないものがスキルなのか資質なのかが決定的に重要なのです。もし自分に欠けているものが、何かのスキルであれば訓練し身につけましょう。そのために時間やお金といった資源をしっかり投入すればそれに見合ったものが手に入ります。しかし、自分に欠けているものが、何かの資質であればそれはあきらめた方が生産的です。スキルであれば訓練でどうにでもなりますが、資質は生まれ持ったものです。訓練しても投入した資源に見合ったものを手に入れることは難しいのが現実です。もちろんある資質が欠けていることで人に迷惑をかけたり、自分自身の足を引っ張ったりするようであれば、最低限人並みレベルまで引き上げる必要はあります。

自分にある資質を活かす

資質に関しては自分にないものではなく、あるものに目を向けることが大切です。スキルと違い、資質は平等です。尊敬するあの人にあって自分にはない資質があるのと同様に、あの人にはなくて自分にはある資質が必ずあります。その自分にある資質をどのようにいかすかを考えるようにしましょう。そして、さらにその資質を磨くことで今度はあなたが他の誰かから「□□が出来てすごい!」と賞賛されるようになるのです。

では、自分の資質をどうやって見つければよいのでしょうか。一つの手がかりは「気づいたら自然とやっていること」です。意識しなくてもついやってしまうこと、苦もなくできること、むしろ楽しいと感じることの中に、あなたの資質が眠っています。また、「昔から変わらずできること」も資質のヒントです。子どもの頃から他の人よりも得意だったことや、特に努力しなくても人から褒められてきたことは、あなたの資質である可能性が高いのです。さらに、過去に人から褒められたり感謝されたりしたことを書き出してみることも有効です。自分では当たり前にやっていることでも、他者から見ると「すごい」と映ることがあります。そのギャップこそが、あなたが気づいていない資質のサインです。

今日からできること

自分の資質に気づき、それを活かしていくために、まず次のことを試してみてください。

  • 自分が「苦もなく、自然にできること」を5つ書き出してみる。これがあなたの資質の候補です。
  • 過去に人から褒められたり感謝されたりしたことを5つ書き出してみる。自分では当たり前と思っていることが、他者には輝いて見えているかもしれません。
  • 他者への羨ましさを感じたとき、それがスキルなのか資質なのかを立ち止まって考える習慣をつける。スキルなら具体的な学習計画を立て、資質なら自分のあるものへと視点を切り替える。
  • 自分の資質を最も発揮できる場面や役割を意識的に増やしていく。

自分にないものばかりに目を向けていては、エネルギーが枯渇してしまいます。自分にあるものに焦点を合わせることで、確実に前に進むことができます。あなたの中にすでにある「すごいもの」に気づくことが、成長の本当のスタートラインなのです。